本研究では、戦略的連携をダイナミック・ケイパビリティ(DC)の視点から定量的に分析します。以下の連携を戦略的連携として認識し、環境適応のための企業行動としてDXに寄与するかどうか検討します。
- 産学連携
古くから研究開発の分野を中心に行われてきた。企業規模が大きいほど産学連携を行っている企業の割合は高いが、近年は中小企業における産学連携が活発化しているという報告がある(独立行政法人経済産業研究所, 2004)。 - 顧客との連携
永山(2017)は、共創の概念を用いて、企業と顧客が双方向的にコミュニケーションをとり、偏在する様々な情報を経営資源として組み入れていくことが組織能力に不可欠であるとしている。 - 同業他社との連携
近年災害が多発化している。災害時の代替生産や援助の協定を盛り込んだ事業継続計画(BCP)を策定するといった、自社の競争力を維持するための連携もまた、経営戦略の一側面として必要性が高まっている。 - 地域企業間の連携
百瀬・吉原(2018)は、中小企業の連携メンバー間を繋ぐ共通点として、地域に注目する。歴史的、社会的に同じ背景を持つ地域に生まれ育ったことによる共通の経験、問題意識等が、連携メンバー間の認知的近接性となり連携の土台を支え、相互学習の効果を高める。 - 公的支援機関を通じた連携
商工会・商工会議所、中小企業団体中央会は相互に支援しあう「メンバーシップ型」の支援機関であり、メンバー間の交流、連携、協働等によって相互に支援資源を提供し合い、課題解決に取り組む(中小企業庁, 2018)。中小企業は、こうした支援機関との連携によって、持続的な成長発展のための環境適応を果たしていくことができる。 - データを活用した連携
2017年に政府が打ち出したコネクテッドインダストリーズ(Connected Industries)は、人、もの、技術、組織等を、データを介して繋げることで、価値創出や生産性向上を図る概念である。既存の関係を越えて繋がりが広がれば、新たな産業構造の構築に至る可能性がある他、中小企業が抱える人手不足の問題や技能継承の課題への対策になりうる(経済産業省, 2017)。
経済産業省(2017)『「Connected Industries」東京イニシアティブ 2017』2017年10月2日発表.
中小企業庁(2018)「支援機関の機能と自治体の関係」中小企業政策審議会小規模企業基本政策小委員会(第12回)配布資料, 資料2.
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)(2004)『平成15年度日本のイノベーションシステムに関わる産学連携実態調査』.
永山庸男(2017)「経営資源と組織能力~RBV アプローチとダイナミック・ケイパビリティ・アプローチ再考~」『環境と経営: 静岡産業大学論集』23(1), 1-12.
百瀬恵夫・吉原元子(2018)「産地における中小企業の連携活動―富士吉田地域における織物産地の事例から―」『拓殖大学経営経理研究』112, 7-20.