納品のない受託開発

2011年設立の株式会社ソニックガーデンは、企業のシステム開発を請け負うソフトウェア会社です。そのビジネスモデルである「納品のない受託開発」とその公正感について書きます。

一般的にソフトウェア・システムは陳腐化しやすく、導入後も各種アップデートや、制度変更への対応といった改修が必要になることが多いものです。しかし、従来のシステム開発では、納品後になると開発チームがプロジェクトを離れることによる対応のもたつきや、仕様変更による追加費用がかさむ等の問題が指摘されています。顧客にとっては、完成したシステムを満足のいく状態で維持することが難しい側面があります。

創業者の倉貫さんは、問題の原因は「納品」という考え方にあるとし「納品のない受託開発」を考案しました。このビジネスモデルでは、システムの開発と改修をまとめて月額定額のサービスとして提供します。士業の顧問契約のように、システム開発をストックビジネス化しているのです。社内で扱う技術の統一化やエンジニアの営業兼務、事務的作業の排除などでコストを削減し、月額料金を低く抑えながらも利益の出る事業を設計しているとのことです。このモデルが成立するためには、顧客とのパートナーシップを強固にし、契約を長期継続させることが条件です。そのため、顧客とは毎週打ち合わせを行い、開発計画は最長でも3か月毎には更新するなどコミュニケーションを密にし、信頼関係を高めているようです。

顧客にとっては、変化に強いシステムを入手できること、多額の初期費がかからないこと(固定費の変動費化)などの利点があります。このビジネスモデルでは、システムを常に向上させ、顧客の利益に貢献し続けることが価値です。そのため、システムの利用開始後、期待していた成果が得られない場合でも、顧客はシステムに対する意見や要望を出し続けることができるわけです。

「納品のない受託開発」は、顧客の発言機会が多くあり、かつ、その意見が反映されやすいと考えられ、顧客から見た公正感が高いビジネスモデルであるといえるでしょう。

参考文献

  • 倉貫義人(2014)『「納品」をなくせばうまくいく ソフトウェア業界の“常識”を変えるビジネスモデル』,日本実業出版社.
  • 「SonicGarden 株式会社ソニックガーデン」公式Webサイト,http://www.sonicgarden.jp/.