経営環境の変化を考慮するための理論の一つとして、ダイナミック・ケイパビリティ(DC)が議論されてきました。
DCには、顧客や技術の変化に適応するために必要となる複製困難な能力が含まれるとされています。Teece(2009 谷口他訳, 2013)は、そのような能力を次の3つに分解して整理しています。
- 「感知(sensing)」(機会を感知、学習する能力)
- 「捕捉(seizing)」(機会を活用する能力)
- 「再配置(reconfiguring)」(企業の無形・有形資産を強化・結合・保護し、必要時には更新することで競争力を維持する能力)
急速に変化する事業環境においては、このような能力の開発と利用が企業の長期的なパフォーマンスを決定づけると考えられています。Teeceは、DCと競争優位の直接的な結びつきを主張する研究者の一人です。一方で、Eisenhardt and Martin、Winterのように、DC と競争優位を密接に関係付けないとする研究者もいます。DC のもたらす効果については多様な理解が共存していることにも触れておきます。
本研究では、DCを環境変化に適応し競争優位を実現する能力と捉えています。
Teece, D. J.(2009)Dynamic Capabilities and Strategic Management: Organizing for Innovation and Growth., New York: Oxford University Press.(谷口和弘・蜂巣旭・川西章弘・ステラ・S・チェン訳(2013)『ダイナミック・ケイパビリティ戦略-イノベーションを創発し、成長を加速させる力』ダイヤモンド社).